Common Cold

風邪

なぜ風邪になるの?

風邪(かぜ)は、正式には「風邪症候群」といって、上気道(鼻やのど)の急性炎症の総称です。ウイルスが粘膜から感染して炎症を起こすため、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、たん、発熱といった症状が起こります。

風邪の主な原因

原因微生物の約90%はウイルス

風邪(かぜ)とは、上気道(鼻やのど)が微生物に感染することによって起こります。原因微生物の約90% はウイルスが占めており、残りの約10%は細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどウイルス以外による感染です。

風邪(かぜ)ウイルスの数は200種類以上といわれており、どのウイルスが原因で起こったのかを特定することは困難です。また、同じウイルスでもいくつもの型があり、それが年々変異します。このため、一度感染したウイルスに対抗する免疫ができたとしても、次々に新しいウイルスに感染するため、繰り返し風邪(かぜ)をひいてしまいます。

なお、インフルエンザを起こすインフルエンザウイルスは風邪(かぜ)を起こすウイルスとは異なり、症状の重さも異なるので、別の病気だと考えておいた方がよいでしょう。

風邪(かぜ)を引き起こす主なウイルス(インフルエンザ以外)

主な風邪(かぜ)ウイルス 主な特徴
ライノウイルス 風邪(かぜ)の原因の約30~40%を占めるのがこのウイルス。秋や春に多く、主に鼻風邪(かぜ)を引き起こす。
コロナウイルス ライノウイルスの次に多く、主に冬に流行する。鼻やのどの症状を起こし症状は軽い。
RSウイルス 年間通じて流行するが冬に多い。乳幼児に感染すると気管支炎や肺炎を起こす場合がある。
パラインフルエンザウイルス 鼻やのどの風邪(かぜ)を起こすウイルスで、子供に感染すると大人より重症になりやすい。秋に流行する型と春~夏に流行する型がある。
アデノウイルス 冬から夏にかけて多い。プール熱の原因もこのウイルス。咽頭炎や気管支炎、結膜炎なども起こす。
エンテロウイルス 夏に流行するウイルス。風邪(かぜ)の症状のほか下痢を起こしたりする。

細菌による二次感染や合併症が起こること

人が1年間に風邪(かぜ)をひく回数は平均3~6回です。風邪(かぜ)は4日から1週間程度で治ることが多く、発熱が3日以上続くことはほとんどありません。しかし、風邪(かぜ)をひいている間に別の細菌に二次感染し、色のついたたんが出たり熱が続いたりすることもあります。また、風邪(かぜ)がきっかけになって中耳炎や副鼻腔炎、さらに気管支炎、肺炎、脳症などの合併症を引き起こすこともあります。また、抵抗力の弱い子供や高齢者の場合、風邪(かぜ)をひく回数は多くなる傾向があります。

子供の場合

年齢が低い子供ほど抵抗力が弱く、身体機能が未熟であるため、風邪(かぜ)をひく回数は多くなります。また、保育園や幼稚園などの集団生活施設でのコップやおもちゃ、ドアノブや机、椅子などを直接なめたり、これらを触った指をなめたりする間接的な接触や、風邪(かぜ)をひいている子供の咳やくしゃみを経由して感染することもあります。子供は気道や鼻道などが狭いため、粘膜が腫れると呼吸困難に陥りやすかったり、体内の水分量が多いために脱水症状を起こしやすかったりします。

高齢者の場合

高齢になると風邪(かぜ)の症状がはっきりあらわれず、知らずに重症化して肺炎を起こすこともあるので、注意が必要です。普段から血圧や熱を測るなどの習慣を持ち、体調の変化に本人や家族が気づいたら早めに受診しましょう。

妊婦の場合

妊婦が風邪(かぜ)をひいた場合、市販薬の使用には注意が必要であると同時に、強い咳などの持続が子宮収縮を招くこともあります。妊娠中は風邪(かぜ)をひかないことが大切ですので、水でのうがいや手洗い、マスクなどで予防しましょう。

風邪(かぜ)をひくと気になるいろいろな症状

風邪(かぜ)をひくと、鼻やのどの症状のほかにも、全身のさまざまな症状が気になります。風邪症状の緩和にあわせて治る場合もありますが、全身症状が強い場合は、風邪症候群ではなく、インフルエンザやウイルス性胃腸炎など他の感染症の可能性もあるので注意が必要です。

頭痛、筋肉痛

体がウイルスと活発に戦うために分泌されるプロスタグランジンという物質が、熱を出したり、頭痛や筋肉痛、関節痛を強めます。痛みや倦怠感が強い場合はインフルエンザの可能性があります。

口内炎

手足口病やヘルパンギーナなど、夏風邪(かぜ)とよばれる感染症で口内炎が起こることがあります。

下痢・嘔吐

冬に発熱とともに下痢や嘔吐が起こったときは、おなかの風邪(かぜ)ともよばれるウイルス性胃腸炎の可能性があります。

便秘

風邪(かぜ)薬の成分によっては、便秘が起こる場合があります。

風邪(かぜ)をひいてしまったら?

風邪(かぜ)をひいてしまったら、症状を和らげるくすりを上手に使いながら、安静にし、水分や栄養補給をして、体が自分の力で治るのを助けましょう。通常の風邪(かぜ)であれば多くの場合、数日で症状が治まります。

医療機関(病院)での受診をおすすめする場合

  • 39度を超える発熱(急激に38度を超える場合も)
  • 黄色や緑色の鼻汁、たん(細菌による二次感染が疑われるため)
  • ひどい、あるいは長く続く咳・たん(他の呼吸器疾患などが疑われるため)
  • ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患、糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持っている場合(重症化しやすいため)
  • インフルエンザが疑われる場合

妊娠中・授乳中に風邪(かぜ)をひいたら?

妊娠中や授乳中でも使えるくすりがあります。成分によっては赤ちゃんに影響する可能性もあるので、まずはかかりつけ医に相談しましょう。不要なくすりをできるだけ避けるため、総合感冒薬より、和らげたい症状に応じたくすりを選ぶほうがよいでしょう。

また、ウイルスと戦う体を助けるため、栄養ドリンクの摂取もおすすめです。風邪(かぜ)などでの発熱による消耗、産前産後の栄養補給を効能効果としたものが、コンビニなどでも気軽に入手できます。

風邪(かぜ)のセルフケア

安静、保温、栄養が風邪(かぜ)の養生3原則

ウイルスと戦う体を助けるため、まずは無理をせず安静にしてゆっくり休むことです。部屋を暖かくして保温を心がけ、体を冷やさないようにしましょう。高熱が出たときは発汗のため脱水症状を起こしやすくなるので、こまめな水分補給を心がけましょう。風邪(かぜ)のときにお風呂に入ってはいけないという根拠はありませんが、脱水や湯冷めにつながらないよう、入浴後の水分摂取と保温に注意しましょう。抵抗力を高めるには栄養が欠かせません。消化のよい良質のたんぱく質やバランスのとれたビタミンなど、体力の消耗を補う栄養価の高いものをとるようにするとよいでしょう。

他人にうつさない配慮も必要

風邪(かぜ)をひいたら他人にうつさない注意も必要です。なるべく人混みに出ないようにし、ウイルスを含んだ咳やくしゃみの飛沫をまき散らさないよう、マスクをするなどの配慮をしましょう。

風邪(かぜ)を予防法

ウイルスに感染しないよう、衛生面に注意することが最善の予防策です。うがい、手洗いをこまめに行いましょう。また、適度な運動やバランスのよい食事、極端な厚着を避けるなど、抵抗力を養い、「風邪(かぜ)をひかない体づくり」を心がけることも大切です

風邪(かぜ)ウイルスの感染を防ぐ

風邪(かぜ)は人から人へうつるものです。風邪(かぜ)を予防するには、流行期には人混みを避け、衛生面に気を配って感染ルートを遮断するのが第一です。

  • 感染者が咳やくしゃみをするとウイルスを含んだ唾液や鼻水が飛沫となって飛び散るので、風邪(かぜ)をひいている人に近づかないようにしましょう。
  • 空気中に飛散したウイルスを吸い込むだけでなく、電車のつり革や室内の家具などに付着したものを触った手を介して感染することも多いため、手洗いも大切です。
  • うがいはウイルスを落とす効果はありませんが、ホコリや細菌を洗い流してのどや口腔内の粘膜にウイルスが付着するのを防いでくれます。

風邪(かぜ)ウイルスに感染しにくい、風邪(かぜ)をひかない体づくり

空気中のウイルスを完全に遮断するのは難しいことです。日ごろから、風邪(かぜ)をひかない体づくりに努めましょう。

温度・湿度のコントロール

冬に空気が乾燥すると、鼻やのどの粘膜が乾燥して体の防御機能が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。また、夏場の冷房や冬の寒さなどで体が冷えると、血液循環が悪くなり繊毛運動が弱って、ウイルスが侵入しやすくなります。室内の温度や湿度を適度に保って、感染しにくい環境を整えましょう。

十分な栄養と適度な運動

偏食を避け、バランスよく栄養をとることが大切です。風邪(かぜ)の予防効果を高めるためには、体の免疫システムに欠かせないビタミンCと体のエネルギー産生に必要なビタミンB1群、鼻やのどの粘膜を強化する働きのあるビタミンB2、B6を多くとることがポイントです。アミノ酸の豊富な動物性たんぱく質を食事に取り入れるのも効果的です。ウォーキングや水泳、ヨガなどの適度な運動で風邪(かぜ)に負けない体力をつけ、免疫力を高めることも大切です。

薄着の習慣をつくる

厚着の習慣は体温調節の能力を低下させ、抵抗力を弱めてしまいます。寒いと感じるほど薄着をする必要はありませんが、薄着にすることで気温の変化に皮膚や粘膜が順応できるよう鍛えましょう。また、温度差の大きい屋外と室内の気温に合わせて、こまめに衣服の脱ぎ着をすることを心がけましょう。ただし、体調がすぐれないときや風邪(かぜ)にかかったときは別です。温かい格好で保温に努め、発汗したときは速やかに着替えましょう。

出典:第一三共HP