Complications

合併症

糖尿病の合併症について

糖尿病は、発病初期には自覚症状がないために、治療せずに放置してしまったり、合併症が起きてから糖尿病とわかることも多い病気です。長期間高血糖状態が続くと、ブドウ糖によって血管がもろくなり、それが原因でさまざまな合併症が発症します。

糖尿病と診断されたら、早めに食事療法・運動療法・薬物療法(内服薬・インスリン注射など)などの治療を行う必要があります。血糖をきちんとコントロールすれば、糖尿病でない人、つまり健康な人と同じような生活を送ることも可能です。

神経障害

糖尿病神経障害の症状は多岐にわたり、健康で快適な生活を脅かします。
長期間高血糖が続くことで発症・進行し、主に両足の感覚・運動神経障害と自律神経障害の症状があらわれます。
進行すると知覚が低下し、足壊疽などの原因になります。
糖尿病と診断されてからの期間が長い程、発症しやすくなります。

糖尿病神経障害を予防するために

  • きちんとした血糖コントロールを続ける。
  • 高血圧や脂質異常がある場合は、主治医の指示に従って治療を行う。
  • 禁酒、禁煙など、生活習慣を改善する。
  • 早期発見・治療のために定期的に神経機能検査・心電図検査を受ける。
  • もし糖尿病神経障害の症状があらわれたら主治医に相談する。

フットケアについて

最も大切なことは「清潔を保つこと」です。足を清潔に保った上で、毎日素足をよく観察し、足に傷がないか、爪が変形していないか、水虫(白癬)やタコ(胼胝)ができていないかどうか確認を行いましょう。
少しでも異常だと感じたら主治医に相談しましょう。糖尿病の場合、感覚が鈍り、痛みなどを感じにくくなる場合があります。
あんかや湯たんぽの使用は危険です。また、靴の選び方や爪の切り方なども注意が必要ですので、ドクターや看護師に確認しておきましょう。

足にこのような症状があったら要注意
  • 感覚が鈍っている
  • 痛みやしびれを感じる
  • 傷(切り傷、ひっかき傷)
  • 傷が治りにくい
  • 靴ずれ
  • タコ(胼胝)
  • 水ぶくれ
  • 皮膚の乾燥やひび割れ
  • 化膿
  • 悪臭
  • 腫れ
  • 足の色が悪い

血糖をコントロールして失明を防ぎましょう

糖尿病が原因で発症する眼の病気は、大きく「網膜症」と「白内障」があります。糖尿病網膜症は糖尿病に特徴的な合併症で、進行すると視覚障害をきたし、失明の原因ともなります。
成人の失明の原因でもあり、毎年、多くの方がこの糖尿病の合併症である糖尿病網膜症で視力を失っています。

糖尿病網膜症を予防するために

  • きちんとした血糖コントロールを続ける。
  • 高血圧の人は、主治医の指示に従い、高血圧の治療も行う。
  • 早期発見・治療のために症状がなくても定期的に眼底検査を受ける。 (自覚症状が出にくいため、自覚症状があらわれた頃には、かなり病気が進行しています。)
  • 万が一、糖尿病網膜症が進行してしまったら、眼科で治療を受ける。 (失明を予防するための治療として、光凝固療法、硝子体手術を受ける。)

糖尿病 腎症

腎臓には毛細血管(細い血管)が集まっており、ここで血液がろ過され、老廃物を尿として体外へ出します。
糖尿病腎症は、長期間高血糖が続くことで毛細血管がもろくなり、発症・進行します。早期にはごく微量の蛋白(アルブミン)が尿中に出てきます。血糖コントロールが良くないとさらに進行が進み、蛋白尿があらわれるようになります。腎不全に進行すると、人工透析が必要になります。

糖尿病腎症を予防するために

  • きちんとした血糖コントロールを続ける。
  • 早期発見・治療のために症状がなくても定期的に微量アルブミン尿や蛋白尿の検査を受ける。
  • 腎症の進行度合いに合わせた治療を行う。

人工透析(透析療法)とは

腎臓の代わりに透析装置で血液をろ過します。これにより血液中の毒性物質を除去したり、不足物質を補充したりします。通常、腕の血管から血液を装置に送り、浄化した血液を再び体内に戻します。1回4~5時間、週3回程度医療機関に通う必要があります。

糖尿病に合併しやすい、さまざまな病気

糖尿病の3大合併症「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」以外にも、糖尿病の人には起こりやすい病気がたくさんあります。糖尿病の他に、肥満、高血圧、脂質異常症などの危険因子が重なることで、さらに合併症は起こりやすくなります。ドクターの指示に従い、自分に合った食事療法・運動療法・薬物療法を実行し、合併症を予防しましょう。

糖尿病に合併する主な病気

細小血管障害(細い血管の障害)

  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病神経障害

大血管障害(太い血管の障害)

  • 脳梗塞
  • 脳卒中
  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 下肢閉塞性
  • 動脈硬化症(下肢の血流障害)
  • 動脈硬化
  • 高血圧

その他

  • 歯周病
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 水虫(白癬)
  • 膀胱炎、尿道感染症、腎盂炎
  • できもの
  • 水疱
  • 陰部のかゆみ
  • 骨減少症

糖尿病の合併症を防ぐために

合併症を防ぐ最大のポイントは「血糖コントロール」です。ドクターのアドバイスに従い、強い意志を持って血糖をコントロールしましょう。

血糖コントロールの指標

HbA1c 7.0%未満を目指しましょう。ただし高齢者は注意が必要です。

HbA1cは過去1~2ヵ月間の平均血糖値を反映する指標で、血糖コントロール状態の最も重要な指標です。

定期的な検査で、合併症を防ぎましょう

糖尿病は自覚症状が少ない病気です。きちんと血糖をコントロールすることはもちろん、合併症の定期的な検査も大切なポイントです。
合併症の早期発見・早期治療のためにも、怖がったり、億劫がったりせずに進んで検査を受けましょう。