当院は成人を対象としているため参考までにご覧ください。
子どもの糖尿病について
食べ物は胃や小腸で分解されてブドウ糖になり、エネルギー源として小腸から血液中に吸収されます。血液中にブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を筋肉などに送り込み、エネルギーとして利用します。インスリンは、すい臓でつくられるホルモンで、血糖(血液中のブドウ糖)を正常に保ちます。 糖尿病は、そのインスリンの不足・欠乏によって、血液中のブドウ糖を上手に利用できなくなり、高血糖(血糖値が高い状態)が続く病気です。この状態が長く続くと、眼の病気(網膜症)や腎臓病などの合併症を引き起こします。 血糖をできるだけ正常にするために治療します。血糖を正常にコントロールしていれば、合併症を起こすことなく、すこやかな人生を送ることができます。
糖尿病の主な種類
1型糖尿病
すい臓でインスリンをほとんど、または、まったくつくることができない糖尿病です。そのため、必要なインスリンを注射で補う治療が必要です。 食べすぎや太りすぎ、また、家族に糖尿病のひとがいるからといって必ず発症することはありません。もちろん感染する病気でもありません。
2型糖尿病
すい臓でつくるインスリンの量が少なかったり、インスリンが体の中で上手に機能しなかったりする糖尿病です。 2型糖尿病の場合、インスリンはすい臓である程度つくられるので、食事療法や運動療法、内服薬で治療できることが多く、最初からインスリン注射で治療を行うことはあまりありません。 大人に多くみられる糖尿病ですが、近年では小学校高学年の子どもにもみられるようになってきました。
糖尿病の子どもたちにとってのインスリンとは
1型糖尿病の子どもたちは、血糖を正常にコントロールするために、体に必要なインスリンを毎日補います。 インスリン注射は一生欠かすことができないもので、日常生活の一部です。毎日、顔を洗ったり、歯を磨くのと同じことです。
インスリン注射による治療
小さい頃
保護者がインスリン注射を行います。小学生になれば少しずつ自分でできるようになります。できるだけインスリン注射回数を少なくするように工夫してあげたい時期です。
小学校高学年~
体が大きくなってきたら、インスリンの量を増やす必要があるため、1日3~4回の注射が必要になります。この頃までに子ども自身で注射ができるようになりたいですね。
インスリンを注射するタイミング
ごはんを食べる前に注射します。超速効型インスリン製剤を使用している場合は、間をあけずに、すぐに食事を摂らせてください。間があくと低血糖を起こす恐れがあります。
インスリンを注射する場所
保健室や教室など、どこでも構いませんが、その子どもの性格や希望、クラスや学校環境を考慮して、個別に対応することが大切です。
インスリンを保管する場所
使用中のインスリン製剤
冷蔵庫に入れず室温で保存します。高温になる場所や直射日光のあたるところには置かないようにしてください。また冬などの寒い時期は凍結にも注意してください。ロッカーや机の中、もしくは保健室に置いておくのもいいでしょう。
未使用のインスリン製剤
忘れたときのために、予備のインスリン製剤を学校で預かっておきましょう。予備のインスリン製剤は冷蔵庫で保管をお願いします(凍結厳禁)。
インスリンは、未使用と使用中で保管場所が異なります。予備として未使用のインスリン製剤を預かる場合は、冷蔵庫で保存し、凍らせないように注意してください。
子どもたちの行事参加
遠足や運動会、修学旅行などの行事は、他の子どもたちと同じように参加させてください。 行事に参加するために必要なインスリンの注射量の調整などは、子ども本人(または家族)とドクターで行います。
予防接種
原則的に問題ありません。何か注意することがあれば連絡します。
遠足や修学旅行
具体的な日程を事前に知らせてもらえると助かります。それを基に、ドクターと相談して、日程に合うようインスリンの注射量を調整します。
体育や運動会
どんな運動でも行うことができます。むしろ、血糖のコントロールには、運動が重要な役割を果たすので、積極的に参加させてください。 体育のある日はインスリンの注射量をいつもより量を減らすなど調整します。また、運動を始める前と後に、糖分を摂る必要がある場合もあります。 但し、水泳やマラソンなどの激しい運動を行うときは、あらかじめドクターと相談してインスリンの注射量を調整する必要がありますので、事前に連絡ノートなどで知らせてもらえると助かります。
低血糖とは
血糖(血液中のブドウ糖)が少ない状態を指します。インスリンが効きすぎるなどして、血糖値が下がると低血糖になります。 インスリンの注射量や回数は、体の状態や、毎日の生活の様子(食事や運動量など)を考慮して、主治医が決めています。 いつもと様子が違うと感じた時は、本人が訴えていなくても先生方から積極的に声をかけていただき、低血糖の対処を行ってください。 早めに対処することで、症状が軽いうちに低血糖を改善させることができます。
インスリンが効きすぎて低血糖が起こりやすい事例
- いつもより運動量が多かった
- いつもより食事の時間が遅くなった
- いつもの食事を抜いてしまった
- いつもより食べる量が少なかった
- 食べたものを吐いてしまった
低血糖の症状
「顔が青白くなる」、「ボーっとする」、「口数が少なくなる」、「反応が悪くなる」、「手や指がふるえる」などの症状があらわれ、「いつもの○○ちゃんと違うなぁ」と先生方が感じることができます。本人が空腹感を訴えた場合も、低血糖になっているとお考えください。
小さな子どもで低血糖の症状をうまく訴えることができない場合は、「泣き叫ぶ」、「不機嫌で怒りっぽくなる」、「聞き分けがなくなる」、「いままで活発だったのが急に静かになる」などの変化がみられます。
低血糖に気づかないまま放置していると、昏睡状態になることもあります。低血糖の症状と様子
血糖値 (mg/dL) | 主な症状 | 子どもの様子 |
---|---|---|
70 | 空腹感、あくび、悪心 | まず、「おなかがすいた」と空腹感を訴えます。 |
60 | ||
50 | 無気力、倦怠感、計算力減退 | ひどくなると、ぐずったり、泣いたり、怒ったり、顔が青白くなったりします。手を握ると冷たい感じがします |
40 | 発汗(冷汗)、動悸(頻脈)、ふるえ、顔面蒼白、紅潮 | まず、「おなかがすいた」と空腹感を訴えます。 |
30 | 意識消失、異常行動 | |
20 | けいれん、昏睡 | |
10 |
低血糖の対処法
低血糖の場合、糖分を補給して血糖を正常に近づけないかぎり症状は改善しません。低血糖に気づいたら、すぐに糖分の補給をお願いします。低血糖にガマンは禁物です。
低血糖の症状がみられたら、すぐ糖分補給を
- ブドウ糖 5~10g
- グルコース製剤(ブドウ糖として5~10g相当)
- 缶ジュース 1本(150~200mL)
- 砂糖 10~20g
※グルコース製剤は市販されています。主治医に相談の上、保護者が購入し、先生にお渡ししますので、いつも先生のポケットの中に入れておいていただけると助かります。
※缶ジュースはブドウ糖を含んだもので、0カロリーでないもの
キャンディーやビスケットなどの甘いお菓子でも対応できますが、先生から与えていただくものとしては、ブドウ糖が良いと思います。
ブドウ糖はお菓子には見えにくい形状の食品ですので、他の子どもたちの前で食べさせても安心です。
低血糖の症状が落ち着いた後は
糖分を補給すれば5分くらいで元に戻ります。 ブドウ糖の場合、その効果は30分程度です。低血糖の症状が落ち着いた後には、できるだけ補食以外のきちんとした食事を摂ることが望ましいです。しかし、低血糖を起こしてから食事の時間まで間があいてしまう場合は、保健室でクッキー、ビスケット、チョコレートなどを補食として食べさせてください。補食のための食品は、先生が保健室などで預かっていただけると助かります。
低血糖への対策
昼食前
昼食前は、低血糖を一番起こしやすい時間帯です。とくに午前中に体育があり、たくさん体を動かす機会があると、インスリンの吸収が良くなり、低血糖を起こすことがあります。昼食前の低血糖にはとくに気をつけていただき、低血糖を起こした場合は、給食の時間が近くてもすぐにブドウ糖を与えてください。
給食
食事上の制限はなく何でも食べられますので、給食は他の子どもと同じように食べさせましょう。おかわりも問題ありません。ただし、おかずばかりを食べて、ごはんやパンなどの主食を半分以上残した場合は、もう少し頑張って食べるよう声をかけてください。また、ほとんど食べなかったり、吐いてしまった場合は、低血糖を起こす可能性がありますので、ご注意をお願いします。また、保護者への連絡もお願いします。
授業中
本人から申し出れば問題ありませんが、そうでない場合でも青白い顔になり、ぐずぐずしていたり、あくびが多かったりすれば、まず低血糖と疑ってください。このようなとき、本人の意識はあまりはっきりしていませんので、すぐにブドウ糖を口の中に入れましょう。ひどくなると眠ってしまうこともあります。このような場合は、声をかけてやり、同様にブドウ糖をお与えください。
体育の時間
原則、授業中と同様の対応をお願いします。
休み時間
夢中で遊んでいると、本人が気づかないまま低血糖になる場合があり、注意が必要です。長い休み時間やお掃除の時間に低血糖を起こした場合、他のお友達から「○○ちゃんがおかしいよ」などと知らせてもらうのもいいですね(保護者からもお願いするようにしておきます)。
高血糖とは
血糖(血液中のブドウ糖)が多い状態を指します。体調を崩すなどして血糖コントロールがうまくいかない場合に高血糖になることもありますが、高血糖に対して学校で対処いただくことはとくにありません。ただし、高血糖の症状を我慢するのも体に良くありません。授業中にトイレに行きたくなったり、水を飲みに行くかもしれませんので、行きやすい環境にしていただければと思います。
高血糖の主な症状
- のどが渇く
- トイレが近くなる