Metabolic Syndrome

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれる病態です。食べ過ぎや運動不足といった生活習慣の乱れなどから、おなかに内臓脂肪が蓄積される「内臓脂肪型肥満」になっており、加えて中性脂肪が高い・HDLコレステロールが低い、血圧が高い、血糖値が高いという項目のうちいずれか2つ以上が重なっている状態を指します。2005年に日本内科学会ほか8学会が合同で診断基準を決めました

出典:第一三共HP

メタボリックシンドロームが危険視される理由

日本人が死亡する三大原因は、悪性新生物(がんなど)、心疾患(心臓病など)、脳血管疾患(脳卒中など)です。そのうち心疾患と脳血管疾患は、動脈硬化(血液がドロドロになるのに伴って、血管も硬くなって詰まりやすくなる状態)が要因となる病気です。内臓脂肪がたまっている人は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症の一歩手前の段階でも、動脈硬化が急速に進行して、心疾患や脳血管疾患といった命にかかわる病気を引き起こしやすくなるため、メタボリックシンドロームとして診断して、早めに進行を予防することが大切になります。

脂肪とコレステロールについて

肥満とは、からだの中に脂肪がたまりすぎている状態です。脂肪はたまる場所によって「皮下脂肪」「内臓脂肪」と呼ばれます。

皮下脂肪

皮膚の下につく脂肪で、腰まわりやお尻、太ももなどの下半身を中心にたまります。女性の悩みとして挙げられるセルライトは、肥大化した皮下脂肪によって現れるものです。適度な皮下脂肪は内臓を守ったりエネルギーを作り出すために必要です。動脈硬化や糖尿病を防いでくれるからだに良い物質も分泌しています。

内臓脂肪

メタボリックシンドロームの原因となる「内臓脂肪」は、内臓のまわりにつく脂肪です。皮下脂肪と違い、内臓脂肪はたまりすぎると動脈硬化のリスクを高める作用を持つ生理活性物質を多く分泌するため、内臓脂肪の多い内臓脂肪型肥満が特に危険視されます。

中性脂肪

皮下脂肪や内臓脂肪のもとになるのが「中性脂肪」です。食事から摂った中性脂肪は血液の流れに乗って体内の各所に運ばれます。適度な中性脂肪は、からだにエネルギーを蓄積するのに必要ですが、増えすぎると血がドロドロになり、動脈硬化を引き起こす原因になります。

コレステロール

コレステロールも脂肪の一種です。細胞の膜を作ったりホルモンや胆汁酸の材料になるなど大切な役割を持っています。主に肝臓で作られ、血液中に運ばれるときは、タンパク質と結びついたHDL、LDLなどと呼ばれる形になっています。

HDL(善玉コレステロール)

体の組織の余分なコレステロールを回収して減らす

LDL(悪玉コレステロール)

肝臓からコレステロールを体の組織へ運び出し増やす

という役割を持っているので、血液中のHDLが少なすぎたり、LDLが多すぎると、血液中のコレステロールが増えすぎて血がドロドロになり動脈硬化の原因になります。

内臓脂肪型肥満の見分け方

ウエストのサイズをチェックする

内臓脂肪型肥満は、腹囲が目安になります。現在は、メタボリックシンドロームの診断基準として「男性85cm以上・女性90cm以上」が内臓脂肪面積100cm2以上に相当するとされ、健康診断などでも用いられています。

出典:第一三共HP

CTスキャンによる内臓脂肪検査

正確には、CTスキャンを用いて腹部断面像を撮影し、内臓脂肪面積100cm2以上かどうかで判断します。

メタボリックシンドロームの予防法は?

メタボリックシンドロームのベースとなる内臓脂肪型肥満を、原因となっている「食べ過ぎ」や「運動不足」などの、不健康な生活習慣を改善して解消しましょう。内臓脂肪は皮下脂肪と比べて、たまりやすい反面、減りやすいものです。

まずは生活習慣をチェック

当てはまる項目が多いほど、メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣を送っています。

  • 20歳のときから体重が10kg以上増加している。
  • 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していない。
  • 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していない。
  • 同世代の同性と比較して歩く速度が遅い。
  • この1年で体重が±3kg以上あった。
  • 早食い・ドカ食い・ながら食いが多い。
  • 就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上ある。
  • 夜食や間食が多い。
  • 朝食を抜くことが多い。
  • ほぼ毎日アルコール飲料を飲む。
  • 現在、たばこを習慣的に吸っている。
  • 睡眠で十分な休養を得られていない。

出典:厚生労働省

運動を習慣づける

運動を行うことで、消費エネルギーが増えて身体機能が活性化し、それにより糖質や脂質が多く消費され、内臓脂肪も減りやすくなります。継続することで、生活習慣病の予防につながります。

1週間の運動例

  • 20分程度のウォーキング→通勤時の往復を利用し1日40分×5日
  • 20分程度の散歩→昼休み×5日
  • 30分程度の軽いジョギング→週3日

通勤時やランチタイムなどの細かい運動に、週3回のジョギングを入れるだけでも充分な運動になります。 運動が苦手な方は、子供と外で遊ぶ、エスカレーターを使わずに階段を使う、週末はガーデニングをするなど、身近なことから始めてみましょう。

食生活を改善する

食べ過ぎは肥満を招きます。自分の年齢や活動量に合った分量を知り、間食やお酒のカロリーも計算に入れて、バランスの取れた適切な量の食事を心がけましょう。食事をする時間や食べ方などでも変わります。上のチェック項目に当てはまる習慣があれば改善しましょう。

出典:第一三共HPより

禁煙する

習慣的な喫煙は、がんにかかりやすくするだけでなく、脂肪の蓄積を促進し、動脈硬化を進行させます。 また、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高める原因にもなります。メタボリックシンドロームをはじめさまざまな生活習慣病を防ぐために、禁煙を実行しましょう。

健康診断を定期的に受ける

健康診断を定期的に受け、腹囲、血清脂質、血圧、血糖値が基準を超えないようにチェックすることも大切です。基準を超えたときは放置せず早く対処しましょう。

メタボリックシンドロームになった場合は?

「内臓脂肪症候群」とも呼ばれるメタボリックシンドローム。まずは生活習慣の見直しが大切です。適度な運動やバランスのよい食事で肥満を改善すべく体重・脂肪の減少を目指しましょう。メタボリックシンドロームの改善は、高血圧症・糖尿病・脂質異常症など、生活習慣病の対策にもつながります。

医療機関での受診をおすすめする場合と、セルフケアできる場合

セルフケアできる場合

メタボリックシンドロームの診断基準に当てはまる人は、まず生活習慣の改善を図りましょう。

  • 運動を習慣づける
  • 食生活を改善する
  • 禁煙する

ようにしましょう。数%体重を減量するだけでも、生活習慣病の改善につながります。

医療機関での受診をおすすめする場合

  • セルフケアで肥満の改善が見られない場合は受診しましょう。
  • 「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」などが疑われる人、診断されている人は医療機関を受診して早めに治療を始めましょう。