どうしてインフルエンザになるの?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが鼻やのどの上気道などの粘膜に感染して起こる病気で、高熱や頭痛、筋肉痛や関節痛などの全身症状を起こします。
インフルエンザの原因となるウイルス
主な感染経路は飛沫感染や接触感染
インフルエンザウイルスには、大きく分けてA型、B型、C型の3種類があります。そのうち、特に大きな流行の原因となりやすいのはA型です。インフルエンザは感染した人のくしゃみや咳などによって飛び散った、ウイルスを含む粒子(飛沫)を鼻や口から吸い込むことで感染します(飛沫感染)。また、飛沫から水分が蒸発した細かい粒子が空気中を浮遊し、それを吸い込んで感染する空気感染や、ウイルスのついた手指やものにふれて感染する接触感染もみられます。感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は1~5日です。
乳幼児や高齢者は重症化することも
インフルエンザの主な症状は、突然に起こる38度以上の発熱、頭痛、結膜の充血の他、筋肉痛や関節痛、倦怠感などの全身症状もみられます。抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は重症化しやすく、肺炎や気管支炎、乳幼児では中耳炎や熱性けいれん、脳症などの合併症を起こすこともあります。もともと呼吸器や心臓の病気、糖尿病、腎臓病、免疫不全などの病気を持つ人も合併症を起こしやすくなります。
インフルエンザと風邪は異なる病気
インフルエンザも、風邪と同じく上気道の感染によって起こる病気です。しかし、インフルエンザを起こすウイルスは風邪を起こすウイルスとは異なり、症状の重さも異なるので、別の病気だと考えておいた方がよいでしょう。鼻水やのどの痛み、咳など風邪と同じような症状が見られることもありますが、風邪にくらべて症状が重く、全身症状をともなうことが多いのが特徴です。また、インフルエンザ脳症や肺炎など、重い合併症を起こしやすいことも風邪とは異なる点です。
インフルエンザと風邪の違い
インフルエンザ | 風邪 | |
発症のしかた | 急激に起こる | ゆっくり起こる |
発熱 | 高い(38~40度) | あってもそれほど高くない(37度台前後) |
関節や筋肉の痛み | 強い | 起こることもある |
悪寒 | 強い | 弱い |
重症感 | あり | 弱い |
鼻やのどの症状 | 全身症状に続いて起こる | 最初からみられる |
ウイルスが突然変異したものが「新型インフルエンザ」
A型のインフルエンザウイルスには144種類もの亜型が存在するといわれています。流行した地域の名前をとって、ソ連型、香港型などと呼ばれるものがあります。B型のインフルエンザウイルスには亜型が存在せず、亜型による分類は行われません。また、A型の同じ亜型でも、絶えず少しずつ変異しているため、過去にその亜型に感染して免疫ができている人でも、変異のしかたによって免疫が効かないこともあります。なかには毎年かかる人もいます。一方、ウイルスが突然大きな変異を起こすことがあり、これまでと全く異なる亜型のインフルエンザウイルスが登場して新たな流行を起こすことがあります。それが、新型インフルエンザです。この場合、ほとんどの人が免疫を持っていないため、急速な世界的大流行(パンデミック)を起こす恐れがあるので、さまざまな予防対策がとられます。
インフルエンザになったら?
インフルエンザのくすりは市販されていないため、感染が疑わしい症状が出た場合は、速やかに医療機関で検査を受けましょう。基本的な治療にはウイルスの増殖を抑える「抗インフルエンザウイルス薬」が用いられます。家庭では安静にし、栄養価の高い食事とこまめな水分補給を心がけましょう。人に移さないための対策も必要です。
医療機関での受診をおすすめする場合
- 39度を超える発熱(急激に38度を超える発熱の場合も)
- 筋肉や関節の痛みを伴う発熱
- 全身の倦怠感
- 黄色や緑色の鼻汁、たん(細菌による二次感染が疑われるため)
- ひどい、あるいは長く続く咳・たん(他の呼吸器疾患などが疑われるため)
- ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患、糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持っている人(重症化しやすいため)
- 地域でインフルエンザが流行しているか、家族に感染者がいるかなども、受診するかどうかを判断する目安のひとつになります。
受診が早すぎると正確な診断が得られないことも
インフルエンザを疑うような症状が見られて検査を受けても、発症した直後はウイルスの量が少なく、「陰性」の結果が出てしまうこともあります。ただし、治療に抗インフルエンザウイルス薬を使用する場合は、発症してから48時間以内に投与することが望ましいため、受診が遅すぎてもよくありません。早めに一度受診し、検査結果が陰性でも症状が続く場合には48時間以内にもう一度受診し、検査を受けるようにしましょう。
インフルエンザのセルフケア
安静、保温、栄養がインフルエンザの養生3原則
まずは無理をせず安静にしてゆっくり休むことです。部屋を暖かくして保温を心がけ、体を冷やさないようにしましょう。さらに、抵抗力を高めるには栄養が欠かせません。消化のよい良質のタンパク質やバランスのとれたビタミンなど、体力の消耗を補う栄養価の高いものをとるようにします。栄養ドリンク剤などを活用して栄養補給するのもよいでしょう。また、高熱が出たときは発汗のため脱水症状を起こしやすくなるので、こまめな水分補給を心がけましょう。
他人にうつさない配慮も必要
インフルエンザにかかったら他人にうつさない注意も必要です。なるべく人ごみに出ないようにし、ウイルスを含んだ咳やくしゃみの飛沫をまき散らさないよう、マスクをするなどの配慮をしましょう。
インフルエンザの予防法
インフルエンザのいちばんの予防法は、流行前のワクチン接種です。あわせてウイルスへの感染予防(手洗い、うがい、湿度コントロールなど)、ウイルスに負けない体づくりも大切です。
流行前にワクチン接種を
ワクチンについて
インフルエンザのワクチンは、不活性化ウイルスを体内に接種することで、抗体がつくられて発症を抑えるものです。ワクチンは毎年、世界各国での流行状況などをみて、国内での流行を予測して作られていますが、接種すれば絶対にかからないというわけではありません。ただし、かかった場合に重症化したり、肺炎などの合併症が起こったりすることを予防する効果は期待できるといわれています。とくに、乳幼児(1歳以上)や高齢者、呼吸器や心臓、腎臓などに持病のある人、その家族はワクチンの接種をおすすめします。
ワクチンの効果は?
ワクチンを接種してから抗体がつくられるまでに約2週間かかります。インフルエンザが流行するのは、毎年12月から翌年の3月ごろまでなので、流行時期を迎える前に、早めに接種しておきましょう。また、ワクチンの効果が続くのは約5ヶ月です。「去年打ったから今年も大丈夫」ということはないので、毎年、シーズン前に接種することが望ましいといえます。
インフルエンザワクチンについてはこちらインフルエンザウイルスの感染を防ぐ
インフルエンザは、人から人に感染する病気です。予防のためには、流行しているときは人ごみを避け、手洗い、うがい、マスク着用などによって感染ルートを断つことが大切です。
人ごみに出ない
学校や職場のほか、ショッピングセンターや繁華街などの人ごみで感染することも多いもの。流行している時期は、不要な外出は避けたほうが安心です。やむを得ず出かける場合は、なるべく短時間ですませましょう。
手洗い、うがい
手洗いやうがいは、手やのどなど、体に付着したウイルスを除去するために有効といわれています。インフルエンザに限らず、感染症予防の基本なので、外出先から戻ったら必ず手洗い、うがいをしましょう。
マスク
人ごみに出る場合などは、市販されている不織布製マスクをつけるといいでしょう。ただし、注意書きなどを読んで正しく着用することが必要です。また、インフルエンザに感染した人が、周囲にウイルスを拡散しないためにもマスクは有効です。
インフルエンザウイルスに感染しにくい体づくり
空気中のウイルスを完全に遮断するのは難しいことです。日ごろから感染しないよう体づくりに努めましょう。
温度・湿度のコントロール
空気が乾燥すると、鼻やのどの粘膜が乾燥して体の防御機能が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。また、夏場の冷房や冬の寒さなどで体が冷えると、血液循環が悪くなり繊毛運動が弱って、ウイルスが侵入しやすくなります。室内の温度や湿度を適度に保って、感染しにくい環境を整えましょう。
十分な栄養と適度な運動
偏食を避け、バランスよく栄養をとることが大切です。風邪の予防効果を高めるためには、体の免疫システムに欠かせないビタミンCと体のエネルギー産生に必要なビタミンB1群、鼻やのどの粘膜を強化する働きのあるビタミンB2、B6を多くとることがポイントです。アミノ酸の豊富な動物性タンパク質を食事に取り入れるのも効果的です。ウォーキングや水泳、ヨガなどの適度な運動で風邪に負けない体力をつけ、免疫力を高めることも大切です。
薄着の習慣をつくる
厚着の習慣は体温調節の能力を低下させ、抵抗力を弱めてしまいます。なるべく薄着にして気温の変化に皮膚や粘膜が順応できるよう鍛えましょう。寒い時期に極端な薄着をするのではなく、温度差の大きい屋外と室内の気温に合わせて、こまめに衣服の脱ぎ着をすることを心がけましょう。
出典:第一三共HP