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大腸がん

大腸がん(結腸がん・直腸がん)とは?

大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。

大腸がんの症状

早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。症状としては、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などがあります。

大腸がんの発生要因

大腸がんの発生は、生活習慣と関わりがあるとされています。赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、飲酒、喫煙により大腸がんの発生する危険性が高まります。体脂肪の過多、腹部の肥満、高身長といった身体的特徴をもつ人で、大腸がんを発生する危険性が高いといわれています。
また、家族の病歴との関わりもあるとされています。特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多くみられます。

大腸がん(結腸がん・直腸がん)の検査

大腸がんの疑いがある場合は、大腸内視鏡検査を行い、がんかどうかの確定診断を行います。がんのある部位や広がりを調べるためには、注腸造影検査やCT検査、MRI検査などを行います。

直腸診

指を肛門から直腸内に挿し込み、しこりや異常の有無を指の感触で調べます。

検査の前処置

注腸造影検査、大腸内視鏡検査では、正確で安全な検査を行うために腸管内をきれいにする必要があります。そのため検査前日から検査食や下剤を服用し、当日に多量(通常約2L)の下剤(腸管洗浄液)をのむ必要があります。

注腸造影検査

バリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮ります。この検査でがんの正確な位置や大きさ、形、腸の狭さの程度などがわかります。最近ではCTコロノグラフィ(7ページをご覧ください)が代用されることがあります。

大腸内視鏡検査

内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく調べます。ポリープなどの病変が発見された場合は、病変全体あるいは一部の組織を採取して(生検)、病理診断を行うことが可能です。病変部の表面構造を画像強調観察や拡大観察を用いて、より精密な検査を行う場合もあります。

CTコロノグラフィ(大腸3D-CT)

肛門から炭酸ガスを注入してCT撮影を行うことで、内視鏡を挿入せずに大腸の内視鏡と同じような画像を撮ることが可能な検査です。病変が疑われた場合には内視鏡検査が必要です。

カプセル内視鏡

カプセルの形をした内視鏡を水と一緒にのみ込み、腸管内を小型カメラで撮影して病変の有無を調べます。撮影した画像は、身に着けた記録装置に転送され、コンピューターで解析されます。2018年6月現在では、内視鏡検査を行うことが難しい一部の患者さんのみ保険適用となっています。

CT検査、MRI検査

CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使用して、体の内部を描き出す検査です。治療前に、周辺臓器へのがんの広がりや転移がないかなどを調べることができます。

PET検査

放射性物質を含んだブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出するのが PET検査です。他の検査で転移・再発の診断が確定できない場合に行うことがあります。

腫瘍マーカー(血液検査)

大腸がんの腫瘍マーカーは、CEA、CA19-9、p53抗体です。腫瘍マーカーの結果だけではがんの有無を診断することはできません。通常は、手術後の再発のチェックや薬物療法の効果判定の補助に用います。

大腸がんの病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。

大腸がんの深達度

大腸がんは、粘膜に発生し、大腸の壁の中を徐々に深く進みます。大腸の壁は、5つの層に分かれており、内側から粘膜(M:mucosa)、粘 膜 下 層(SM:submucosa)、固 有 筋 層(MP:muscularis propria)、漿膜下層(SS:subserosa)、漿膜(SE:serosa)に分かれています

大腸がんの病期(ステージ)

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、深達度、リンパ節転移・遠隔転移の有無によって決まります。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。
病期は、0期、I期、II期、III期、IV期に分類されます(表1)。

0期 がんが粘膜内にとどまる
I期 がんが固有筋層にとどまる
II期 がんが固有筋層の外まで浸潤している
III期 リンパ節移転がある
IV期 血行性転移(肝転移、肺転移)または腹膜播腫がある

治療の選択

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。治療法は、がんの進み具合(病期)、全身状態、年齢、合併するほかの病気などを考慮して決定されます。0期~ III期では、主にがんを切除できるかどうかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術を行います。切除できない場合には、薬物療法を中心とした治療を行います。IV期の場合は、治療方法を総合的に判断します。

内視鏡治療

内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。治療の適応は、リンパ節に転移している可能性がほとんどなく、一括でとれる大きさと部位にある場合になります。がんの深さでいうと粘膜下層への広がりが軽度(1mm)までにとどまっているがんです。

切除の方法

切除の方法には、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の大きさや部位、肉眼で見た形(肉眼型)、予測されるがんの広がりの程度などによって治療方法が決定されます。

内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主に、キノコのように隆起した形の病変に対して行われます。内視鏡の先端からスネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーを出し、病変を絞め付けて、高周波電流で焼き切ります。最近では高周波を用いないで、そのままスネアで切り取るコールドポリペクトミーという方法も行われています。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

主に大きな病変などEMRで切除が困難な病変に対しての治療方法になります(図8)。病変の粘膜下層に、ヒアルロン酸ナトリウムなどの薬剤を注入して、病変の周りや下を電気メスで徐々に切開しはぎ取る方法です。EMRに比較すると治療に時間がかかります。また、出血や穿
せんこう孔(穴が開く)などのリスクも少し高くなります。

手術(外科治療)

内視鏡治療でがんの切除が難しい場合、手術を行います。手術では、がんの部分だけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節も切除します。がんが周囲臓器にまで及んでいる場合は、可能であればその臓器も一緒に切除します。腸管を切除した後には、残った腸管をつなぎ合わせます。腸管をつなぎ合わせることができない場合には、人工肛門(ストーマ:肛門の代わりとなる便の出口)をおなかに作ります。

結腸がんの手術

がんの周囲にあるリンパ節を同時に切除するために、がんのある部位から10cmほど離れたところで腸管を切除します。がんがある部位によって切除する腸管の範囲が決まるため、手術には回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術、S状結腸切除術などがあります。一方、大腸ががんでふさがれていて、がんを切除できない場合には、食べ物や便が流れるように迂回路を作る手術(バイパス手術)を行うことがあります。

直腸がんの手術

直腸は骨盤内の深く狭いところに位置しており、その周囲には前立腺・膀ぼうこう胱・子宮・卵巣があり、その出口は肛門に連続しています。直腸がんはその部位や進行の状況により、直腸局所切除術・前方切除術・直腸切断術・括約筋間直腸切除術などの術式の中から適切な術式を選んで手術を行います。また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を調節する自律神経があり、がんがこの自律神経の近くに及んでいなければ、手術後に機能障害が最小限ですむよう、自律神経を手術中に確認して残す手術を行います(自律神経温存術)。

腹腔鏡下手術(ふくくうきょう)

腹腔鏡下手術は、炭酸ガスでおなかをふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡下手術は開腹手術に比べておなかのきず(創)が小さいため、手術後の痛みが少なく回復が早いという長所がある一方、開腹手術に比べて手術時間が長くなりやすく、手術費用が若干高くなります。がんの部位や患者さんの体格、患者さんが以前に受けた手術などにより、手術の難しさが左右されるため、腹腔鏡下手術を考える際には、しっかりとご相談の上おこないます。

術後合併症

手術後の合併症とは、手術後の好ましくない症状や状態のことをいいます。縫合不全、創感染(そうかんせん)、腸閉塞((ちょうへいそく)イレウス)などです。合併症が起こった場合には、それぞれの状況に応じて治療が行われます。

放射線治療

直腸がんの骨盤内の再発を抑える、人工肛門を避けるなどの目的で行う「補助放射線治療」と、痛みや吐き気、嘔吐、めまいなどのがんの再発や転移による症状を和らげることを目的とした「緩和的放射線治療」があります。

補助放射線治療

切除が可能な直腸がんが対象となります。放射線治療は、主に手術前に行い(術前照射)、薬物療法と一緒に行う場合もあります。

緩和的放射線治療

直腸がんなどの骨盤内の腫瘍による痛みや出血、骨への転移による痛み、脳への転移による吐き気、嘔吐、めまいなどの神経症状などを改善する目的で行われます。多くの場合、症状が改善します。

副作用について

治療期間中に起こる副作用は、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、皮膚炎(日焼けに似たもの)、白血球減少などがあります。頭部への照射では頭痛、嘔気、脱毛が、腹部や骨盤への照射では下痢、腹痛などがあります。
治療後しばらくして起こる副作用は、腸管や膀胱などからの出血や膀胱炎・腸炎、頻回の排便、頻尿、隣接する臓器と交通(瘻孔(ろうこう))ができることなどがあります。

薬物療法

副作用の対策が進歩したことから、多くの患者さんは、日常生活を送りながら外来で化学療法を受けることができるようになりました。

補助化学療法

一般的に、根治切除が行われたステージIII大腸がんの患者さんに対して、3カ月~ 6カ月行われます。

切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法

手術による治癒が難しい場合、がん自体を小さくして手術ができるようにしたり、がん自体の進行を抑え、延命および症状を軽減したりすることを目的として全身化学療法を行います。化学療法のみで完治することは難しいですが、化学療法を行ったほうが生存期間を延長し、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を向上させることがわかっています。
全身化学療法で使用する薬剤の組み合わせは複数あり、全身状態、合併症の有無、腫瘍の状態(がんの遺伝子の状態など)から治療方針を決定します。

転移・再発

転移とは、がん細胞がおなかの中にこぼれ落ちたり、リンパ液や血液の流れなどに乗ったりして別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。再発とは、目に見えるがんを手術で全部切除できたようにみえても、時間がたってから再びがんが出現することをいいます。

転移

転移しやすい部位は、肝臓や肺、腹膜、脳、骨などです。転移した部位によって治療法が異なります。

再発する部位は、肝臓、肺、局所(がんがあったところの周辺)、腹膜、リンパ節で、吻合部((ふんごうぶ)つないだところ)に発生することもあります。再発する人の約80%は手術後3年以内に、95%以上は5年以内に見つかります。転移・再発といってもそれぞれの患者さんでの状態は異なりますので、状況に応じて治療法やその後のケアを決めます。肝転移・肺転移や吻合部での再発、局所再発では手術によって治癒する可能性もあります。腸閉塞になった場合は、バイパス手術や人工肛門を作ることで食事ができるようになることがあります。

経過観察

内視鏡治療や手術の後も小さながんが隠れて残っていると、月日とともに徐々に大きくなり、やがて、再発と診断されます。問診や診察、あるいは、症状の有無だけでは早期の発見は難しく、定期検査が必要です。内視鏡治療後は主に大腸内視鏡を用いた定期検査を行います。一方、手術の後は、切除した大腸がんの病期によっても異なりますが、3カ月ごとの血液検査や6カ月ごとの画像検査(CT検査や腹部超音波検査など)を行います。また、内視鏡治療後と同様、大腸内視鏡検査も定期的に行います。がんの再発がない場合には5年間が定期検査の目安となります。