Idiopathic thrombocytopenic purpura

特発性血小板減少性紫斑病

特発性血小板減少性紫斑病とは?

免疫の仕組みの異常によって血小板の数が減少し、出血しやすくなる病気です。

特発性血小板減少性紫斑病の特徴

  • 血小板に対する『自己抗体』がつくられることで、血小板が破壊される後天性の自己免疫疾患です。
  • 血小板以外の赤血球や白血球には、異常は認められません。
  • 急激に発病し多くは6か月以内に治癒する『急性型』と血小板減少が6か月以上続く『慢性型』に分けられます。
  • ピロリ菌感染が原因になっていることもあります。
  • 国の『指定難病』に含まれているため、一定の条件を満たした方は医療費助成の対象になります。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の種類

小児に多い『急性型』は約9割が治癒します。成人に多い『慢性型』は多くの場合、治療の継続が必要となります。

急性ITP 慢性ITP
好発年齢 幼児(2〜5歳) 20〜40歳 60〜90歳
男女別 男児1:女児1 若年発症例では男性1:女性3 高齢者では差はなし
好発時期 冬〜春 特になし
発症様式 急性の発症 発症時期が明確なことが多い 発症時期が不明なことが多い 健診などで見つかることがある
先行事象 ウイルス感染 予防接種後 なし
出血症状 強い 軽症から重症までさまざま
経過 6か月以内に寛解 慢性に経過し6か月以上

※出典:金倉譲総編集:よくわかる血栓・止血異常の治療より

特発性血小板減少性紫斑病の治療法

ピロリ菌が陽性の場合は『除菌療法』、陰性の場合は副腎皮質ステロイド製剤が第1選択となります。

ピロリ菌が陽性の場合

ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法

ピロリ菌検査で陽性となった患者さんでは、血小板数に関係なく第1選択となる治療法です。

ピロリ菌が陰性/ピロリ菌除菌療法の場合

副腎皮質ステロイド療法

副腎皮質ステロイド製剤を服用して血小板の破壊を抑える療法です。

脾臓の摘出手術

血小板が破壊される部位である脾臓を手術で取り除く外的治療です。 ※当院では大型病院への紹介となります。

トロンボポエチン受容体作動薬

血小板の増殖因子の受容体に作用して巨核球の成熟を促し、血小板の数を増加させる治療です。

リツキシマブ療法

B細胞に作用して血小板を破壊する自己抗体の産生を抑える治療法です。

緊急時や外科的処置が必要な場合

脳内出血。消化管出血などがみられる場合や術前、分娩前、血小板数が1万/μL以下、粘膜出血を伴う場合に行われる治療です。

免疫グロブリン大量療法

抗体の中で大きな役割を担っている『免疫グロブリン』を製剤にして点滴で投与する治療法です。

ステロイドパルス療法

ステロイド薬を3日間続けて大量に点滴する治療になります。

血小板輸血

輸血用の血液製剤を投与して血小板成分を補充し、止血や出血を防止する療法になります。

妊娠時の治療と管理について

妊娠を予定される前に、まずはお気軽にご相談ください。

妊娠時・出産時について

  • ITPが、妊娠を妨げることはありませんが、ITPの症状が重くなることがありますので、適切な治療を行いながら症状を十分管理することが大切です。
  • 血小板が少ないときには、当院のような血液専門の内科医と産科医のいる病院での、妊娠、出産をおすすめいたします。

妊娠中の治療

  • 副腎皮質ステロイド療法や免疫グロブリン大量療法により、血小板数を3万μL以上を保つようにします。
  • 自然分娩時に、血小板数5万μL以上であれば、一般的に特別な処置は必要ないとされております。
  • それ以下、あるいは出血傾向を示す場合には免疫グロブリン大量療法、血小板輸血、副腎皮質ステロイド療法など、当院とかかりつけの産院が相談させて頂き、事前に行なう場合があります。
  • 難治性で血小板数3万μL未満で妊娠を希望される若い女性患者さんは脾臓を摘出する治療をおすすめする場合があります。

新生児の影響と注意

  • 母親の抗血小板抗体は、胎盤を通過して胎児へ移行することで、新生児に一時的な血小板減少がみられることがあります。新生児の出血については注意が必要です。
  • 新生児の脳内出血を避けるため、分娩時には鉗子(かんし)分娩や吸引分娩などは行わないようにします。

生活上の注意点とアドバイス

体調管理を中心に、特に感染症にかからないように注意してください。

感染を予防するするために

  • 手洗いは毎食事前後、トイレの後、外出後に石鹸を使って行いましょう。
  • うがいは外出後だけではなく、家にいる時、寝る前も行いましょう。
  • 入浴、またはシャワー浴をできるだけ毎日行い、清潔な衣類を身につけましょう。
  • 排便後は、できるだけシャワートイレを使いましょう。
  • 人混みを避け、マスクを着用しましょう。

体力を維持するために

  • 規則正しい生活を心がけましょう。
  • 貧血症状がある場合は、無理をせず、できるだけゆっくりからだを動かすようにしましょう。
  • 貧血になると手足が冷えやすくなるので 保温に努めましょう。

外来で治療を受けるときの注意点

  • 症状がなくてもくすりは 必ず服用してください。
  • 必ず定期的に診察を受けてください。 特に血液検査が重要です。
  • 体調管理に注意してください。もし体調がおかしいときは、すぐに医師に相談してください。

医療費の公費助成について

申請して一定の条件を満たした場合は、特発性血小板減少性紫斑病は国が定められた『指定難病』に含められていますので治療に伴う医療費の助成を受けられます。

  • 指定難病の医療費助成を受けるためには、『医療受給者証』が必要です。

申請から交付までの流れ

申請書類などの提出

1.最寄りの市区町村の窓口に以下の書類を提出します。 (※詳細は市区町村の窓口にお問い合わせください。)

  • 特定医療費支給認定申請書(ご自身で記入)
  • 個人番号(マイナンバー)を記載する書類
  • 臨床調査個人票(診断書)
  • 住民票(世帯全員が載っているもの)
  • 市区町村税(非)課税証明書(世帯全員分)
  • 健康保険証のコピー

医療受給者証の交付(申請から2〜3ヶ月後)

お住まいの都道府県が申請内容を審査し、認定されれば医療受給者証が交付されます。
非認定の場合は、その旨の通知があります。

窓口へ提示

都道府県が指定した医療機関を受診し、窓口に医療受給者証をご提示頂けば、公費負担(医療費助成)を受け付けることが出来ます

自己負担額は病気の状態や世帯の所得に応じて異なります。