真性多血症とは?
造血幹細胞に何らかの異常が生じて、主に赤血球が異常に増えてします病気です。
真性多血症の特徴
- 年間発症頻度は、人口10万人あたり2人程度と推定されています。やや男性に多く、50歳〜60歳に診断のピークがみられます。
- 多くの場合、赤血球だけでなく、血小板や白血球も増加します。
- 無治療でいると血栓症などの合併症により生命が脅かさせるようになるため、診断後は血栓症の発症を抑える治療を行います。
- 経過中に、急性白血病や骨髄線維症などに移行することもあります。
真性多血症の主な症状
赤血球を中心に血液細胞の産生が亢進して、次のような症状が現れやすくなります。
循環障害
- 頭痛
- めまい
- 赤ら顔(顔面紅潮)
- 耳鳴りなど
血栓形成
- 胸痛、胸が苦しい
- 動機、冷や汗
- ろれつが回らないなど
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 肺塞栓症
肝腫大・脾腫
- 肝臓や脾臓が腫れる
その他の症状
- 全身のかゆみ
- 高血圧
- 消化性潰瘍など
本態性血小板血症とは?
造血幹細胞に何らかの異常が生じて、主に血小板が異常に増えてしまう病気です。
本態性血小板血症の特徴
- 年間発症頻度は、人口10万人あたり2人程度と推定されます。50歳以降の中年期に診断のピークがみられます。
- 多くの場合、血小板だけではなく、白血球や赤血球も増加します。
- 血栓症の発症リスクが低く自覚症状のない患者さんでは、生活改善のもと無治療で経過観察することもあります。
- 経過中に真性多血症やけ急性白血病、骨髄線維症などに移行することもあります。
本態性血小板血症の症状
血小板が増加し、血小板の働きの異常も加わって、下記のような症状が現れやすくなります。
出血傾向
- 鼻血などの粘膜出血
- 消化管出血
- 止血しにくい
血栓形成
- 胸痛、胸が苦しい
- 動機、冷や汗
- ろれつが回らないなど
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 肺塞栓症
肝腫大・脾腫
- 肝臓や脾臓が腫れる
その他の症状
- 頭痛
- めまい
- 四肢末端の発赤
- 灼熱感など
症状がはっきりしないことも多く、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることがあります。
真性多血症・本態性血小板血症の原因
今までは不明でしたが、2005年に『JAK2』と呼ばれる遺伝子に異常があることが発見されました。
JAK2は造血幹細胞の増殖に重要な役割をもつ遺伝子です。
このJAK2遺伝子の変異は、真性多血症ではほぼ全員、本態性血小板血症では約60%に認められています。
真性多血症・本態性血小板血症の治療法
病気そのものを治すことができませんが、血栓症の発病を抑えることを目標に下記のような治療を行います。
瀉血療法(しゃけつ)
血液を抜き取ることで、赤血球のかずを減らします。真性多血症に対する最も一般的な治療法です。
抗血栓療法(こうけっせん)
抗血小板薬(アスピリンなど)を服用して、血栓をできにくくする治療法です。
薬学療法
化学療法
抗がん薬を使って血液細胞の数を減らし、病気をコントロールする治療法です。
選択的な作用機序を持つ薬物による治療
- 本態性血小板血症に対する治療薬(アナグレリド)
- 真性多血症に対する治療薬(ルキソリチニブ)
病気の経過と予後について
- 真性多血症や本態性血小板血症の方の多くは、治療によって検査値が安定するに従って症状が軽快し、通常の日常生活を送ることができます。
- ただし、一部の患者さんでは、経過中に合併症を併発したり、他の失火に移行することがあるため、定期的に診察を受けることが大切です。
予後にかかわる主な危険な因子
合併症
- 脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症
- 脳出血や消化管出血などの出血性疾患
移行することがある疾患
- 急性白血病
- 原発性骨髄線維症
合併症について
合併症の予兆を見逃さないことが大切です。
このような症状がみられた場合には、すぐに受診してください。
脳梗塞の場合
- 声をかけてもぼんやりとして返事ができない
- 話をしづらくなったり、手足が動かしづらい
心筋梗塞の場合
- 胸からみぞおちの辺りに、締めつけられるような苦しさ、痛みが起こる
出血状態
- 鼻血が出る
- 胃が痛む
- 黒い色の便(タール便)がみられる
日常生活で気をつけること
- 脱水状態にならないように、水分はきちんと補給するようにしてください。
- 喫煙と過度の飲酒は控えましょう。
- ストレスをためないように過労は避けましょう。
- 適度な運動とバランスのよい食事を心がけましょう。
- 肥満、高血圧、高脂血症にならないように気をつけましよう。治療中の人は治療を続けて、よい状態を維持しましょう。
- 手術や抜歯などが必要な場合には、あらかじめドクターに相談してください。
忘れないで頂きたいこともあります
- 症状がなくても薬は必ず服用してください。
- 定期的に健診を受けてください。
- 症状体調管理に注意してください。もし体調がおかしい時には、すぐに病院までご連絡ください。
- 抗がん薬で治療を受けている場合は、ドクターの指示通り、きちんと服用してください。
生活上の注意点とアドバイス
体調管理を中心に、特に感染症にかからないように注意してください。
感染を予防するするために
- 手洗いは毎食事前後、トイレの後、外出後に石鹸を使って行いましょう。
- うがいは外出後だけではなく、家にいる時、寝る前も行いましょう。
- 入浴、またはシャワー浴をできるだけ毎日行い、清潔な衣類を身につけましょう。
- 排便後は、できるだけシャワートイレを使いましょう。
- 人混みを避け、マスクを着用しましょう。
体力を維持するために
- 規則正しい生活を心がけましょう。
- 貧血症状がある場合は、無理をせず、できるだけゆっくりからだを動かすようにしましょう。
- 貧血になると手足が冷えやすくなるので 保温に努めましょう。
外来で治療を受けるときの注意点
- 症状がなくてもくすりは 必ず服用してください。
- 必ず定期的に診察を受けてください。 特に血液検査が重要です。
- 体調管理に注意してください。もし体調がおかしいときは、すぐに医師に相談してください。
研究が進む真性多血症/本態性血小板血症
真性多血症/本態性血小板血症では新しいくすりや治療 の研究が進められています。
このような新しい治療法によって骨髄異形成症候群の治療戦略や分類、治療成績が変わる可能性があります。
新治療法については、その都度ブログなどでご報告させて頂きます。