骨髄異形成症候群とは?
造血幹細胞に何らかの異常が生じて、正常な血液細胞が造られなくなる病気です。
骨髄異形成症候群の主な症状
血液細胞が減少し、正常に働かなくなることで様々な症状が現れます。
赤血球の減少・機能異常〜貧血〜
めまい、だるさ、動機、息切れなどの症状が出る。
白血球の減少・機能異常〜感染を伴う発熱〜
感染が起こりやすくなり、発熱を伴う。
血小板の減少・機能異常〜出血傾向〜
血が止まりにくくなったり、出血しやすくなる。
骨髄異形成症候群の原因
ほとんどの場合で原因は不明です。過去に抗がん剤の治療や放射線治療を受けている場合、その後数年立って骨髄異形成症候群が発症することもあります。
※骨髄異形成症候群は人に感染したり遺伝したりすることはありません。
骨髄異形成症候群の治療法
年齢やリスクなどを総合的に考えて、治療法を決めていきます。
薬物療法
高リスク骨髄異形成症候群に検討される治療法です。
DNAメチル化阻害薬(アザシチジン)
骨髄異形成症候群の発症に関係しているDNA(遺伝子)のメチル化を阻害することで、異常細胞の増殖を抑制する作用がある薬剤です。
芽球の数を減らす化学療法
抗癌剤を用いて芽球を破壊し、芽球の数を減らすこと目指します。
患者さんの状態によって、投与量を減らしたり休薬期間を延長することがあります。
免疫調節薬(レナリドミド)
がん細胞の増殖を免疫反応などで抑えたり、がん細胞に栄養を与える血管をつくらせないようにするなどの働きによって、異常細胞を減らしたり増殖を抑える作用の薬剤です。
※安全に服用いただくために、決められた手順に沿って治療を続ける必要があります。
サイトカイン療法
サイトカインとは、もともと身体のなかで血液細胞の産生を促している物質です。これらを薬として投与して、血液細胞(白血球や赤血球)を補う治療を『サイトカイン療法』といいます。
※サイトカイン療法は効果的な薬物治療ですが、長期的な安全性が確立していないなどの課題もあります。
支持療法
不足した血液細胞を輸血などで補う治療です。造血幹細胞移植や薬物療法が行えない場合などは、支持療法のみで経過観察することもあります。感染や出血への対処も含まれます。
輸血療法
不足した血液細胞を輸血で補う治療法です。輸血療法は他人の『血液』を輸血するので一種の臓器移植とも考えられ、身体に大きな負担をかける可能性があります。このため、輸血は厳重な管理とチェック体制のもとで行われます。
造血幹細胞移植
唯一、骨髄異形成症候群の治癒が期待できる治療法です。全てのリスクの骨髄異形成症候群が対象となりますが、移植を行なうためには、年齢や身体状態、ドナーの有無などの条件があります。また、移植には一定の危険が伴うことも知っておく必要があります。
骨髄異形成症候群の予後判断
予後因子の配点 | 0 | 0.5 | 1 | 1.5 | 2 |
---|---|---|---|---|---|
骨髄での芽球 | <5% | 5〜10% | ー | 11〜20% | 21〜30% |
核型 | 良好 | 中間 | 不良 | ||
血球減少 | 0/1系統 | 2/3系統 |
リスク群 | 点数 | 50%生存 | 急性骨髄性白血病 移行率 |
---|---|---|---|
Low | 0 | 5.7年 | 19% |
INT-1 | 0.5ー1.0 | 3.5年 | 30% |
INT-2 | 1.5ー2.0 | 1.2年 | 33% |
High | >2.5 | 0.2年 | 45% |
血球減少
好中球減少<1.800/μL
貧血:Hb<10g/dL
血小板減少<10g万/μL
核型
良好:正常、20q-、-Y、5q-
中間:その他
不良:複雑(3個異常)、7版染色体異常
出典:骨髄異形成症候群治療の参照ガイド
IPSS-R スコアと予後グループ
予後因子の 配点 | 0 | 0.5 | 1 | 1.5 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
核型 | Very Good | ー | Good | – | Intermediate | Poor | Very Poor |
骨髄芽球 比率(%) | ≦2 | >ー | 2〜<5 | ー | 5〜10 | >10 | |
Hb (g/dL) | ≧10 | ー | 8〜<10 | <8 | ー | ー | ー |
血小板数 (×103/μL) | ≧100 | 50〜<100 | <50 | ー | ー | ー | ー |
好中球数 (×103/μL) | ≧0.8 | <0.8 | ー | ー | ー | ー | ー |
リスク群 | 点数 |
---|---|
Very low | ≦1.5 |
Low | >1.5〜3 |
Intermediate | >3〜4.5 |
High | >4.5〜6 |
Very high | >6 |
IPSS-R における染色体リスク群
予後グループ | 染色体核型 |
---|---|
Very good | -Y, del(11q) |
Good | 正常, del (5q) , del (12p), del(20q), double including del(5q) |
Intermediate | del(7q), +8, +19, i (17q),any other single or double independent clones |
Poor | -7 inv ( 3 ) /t ( 3q ) /del(3q), double including -7/del(7q), 複雑核型 (3 個の以上) |
Very poor | 複雑核型 (3 個より多いもの) |
生活上の注意点とアドバイス
体調管理を中心に、特に感染症にかからないように注意してください。
感染を予防するするために
- 手洗いは毎食事前後、トイレの後、外出後に石鹸を使って行いましょう。
- うがいは外出後だけではなく、家にいる時、寝る前も行いましょう。
- 入浴、またはシャワー浴をできるだけ毎日行い、清潔な衣類を身につけましょう。
- 排便後は、できるだけシャワートイレを使いましょう。
- 人混みを避け、マスクを着用しましょう。
体力を維持するために
- 規則正しい生活を心がけましょう。
- 貧血症状がある場合は、無理をせず、できるだけゆっくりからだを動かすようにしましょう。
- 貧血になると手足が冷えやすくなるので 保温に努めましょう。
外来で治療を受けるときの注意点
- 症状がなくてもくすりは 必ず服用してください。
- 必ず定期的に診察を受けてください。 特に血液検査が重要です。
- 体調管理に注意してください。もし体調がおかしいときは、すぐに医師に相談してください。
研究が進む骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群では新しいくすりや治療 の研究が進められています。
このような新しい治療法によって骨髄異形成症候群の治療戦略や分類、治療成績が変わる可能性があります。
新治療法については、その都度ブログなどでご報告させて頂きます。