甲状腺眼症とは?
甲状腺眼症は、甲状腺の異常(主にバセドウ病)が原因で起こる眼の病気です。バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身にさまざまな影響を及ぼしますが、その影響が目に現れるのが「甲状腺眼症」です。眼の周りの組織や筋肉が炎症を起こし、腫れたり肥大したりするため、眼球が突出して見えることが特徴です。特に20~50代の女性に多く、甲状腺疾患の診断がついていない場合でも甲状腺眼症が現れることがあります。
甲状腺眼症の症状
甲状腺眼症の主な症状は、次の通りです。
- 眼球突出:眼球が通常よりも前に出ることが多く、顔の印象が変わることもあります。
- まぶたの腫れ・下がり:まぶたが腫れたり、まばたきがしにくくなったりすることがあります。
- 複視(ものが二重に見える):眼球を動かす筋肉が炎症で硬くなるため、視界にズレが生じ、ものが二重に見えることがあります。
- ドライアイ:まばたきがしづらくなることで、眼球の乾燥が進み、ドライアイの症状が出ることもあります。
- 目の痛み・違和感:目がゴロゴロしたり、圧迫感を感じることもあります。
これらの症状は進行の段階によって異なり、軽症の場合は違和感がある程度ですが、重症化すると日常生活に支障をきたすこともあります。
甲状腺眼症の原因
甲状腺眼症の原因は、免疫の異常です。ほとんどの場合甲状腺ホルモンが過剰なバセドウ病が関連しています。バセドウ病において甲状腺を刺激する物質(TSH受容体刺激抗体 TSAb)が甲状腺だけでなく、眼の奥の脂肪、目を動かす筋肉などの組織を攻撃してしまう自己免疫反応が問題です。喫煙やストレスもリスクを高める要因とされています。大切なことは、バセドウ病自体の状態が安定していても眼症が進行することがあるため、定期的な診察が必要です。
甲状腺眼症の治療方法
甲状腺眼症の治療は、まず甲状腺ホルモンの異常を正すことから始めます。甲状腺機能のコントロールが安定すれば、眼の症状も落ち着く可能性があります。具体的な治療方法には以下のようなものがあります。
- 甲状腺機能のコントロール:薬物療法、放射性ヨウ素治療、手術で甲状腺ホルモンを安定させます。
- 抗炎症治療:ステロイドを用いて眼周辺の炎症を抑えることが一般的です。ステロイド点滴や内服で効果が見られない場合、放射線療法が行われることもあります。
- 外科手術:重症化して眼球突出が顕著な場合、手術で眼球を正常な位置に戻したり、視力低下を防ぐ治療を行うことがあります。
- 生活習慣の改善:喫煙は甲状腺眼症を悪化させるため、禁煙が推奨されます。また、十分な睡眠、バランスのとれた食事、ストレスの管理も重要です。
上記の2.の治療は注射で行いますが、ステロイド剤には高血糖、感染症にかかりやすい、肝炎などの副作用があります。2024年末以降で、それらの副作用を回避できる”IGF-1受容体抗体”というおくすりが使用可能になり、新たな治療選択肢として期待されています。
甲状腺眼症の予防と日常生活での注意点
甲状腺眼症の発症リスクを下げるためには、日常生活での工夫が大切です。とにかく喫煙されている方においては禁煙が重要です。喫煙は甲状腺眼症の発症や悪化に関連しているため、禁煙は必須です。目の乾燥を防ぐために加湿器を使ったり、適度に休憩を取ることも効果的です。また、目を守るためにサングラスをかけたり、眩しい場所を避けることも役立ちます。
甲状腺眼症は、早期に診断・治療することで進行を遅らせ、症状を軽減できる場合があります。もし目に違和感があり、目が腫れたり、突出したりする症状が現れた場合は、早めに医師に相談しましょう。