インスリンポンプとリアルタイムCGMを付けてみた
こんにちは😊
9月、10月は学会月間(新型コロナの影響で糖尿病学の進歩、糖尿病学会地方会、糖尿病年次集会がこの期間に凝縮)であり、医療従事者にとって刺激が多い時期となっております。ぼくも何か新しいことを、と思いインスリンポンプを付けてみることにしました。リアルタイム血糖測定(CGM)を併用したSAP療法というものです。血糖値を常に把握し、常時インスリンを注入することができ、さらに目の前の糖質の量の合わせて追加インスリン注入ができるという画期的なシステムで、今回製造元であるメドトロニック社にご来院頂きました。
実際はインスリンではなく、生理食塩水が充填してあります。
実際自分に装着するのは初めてでしたが、痛みもさほどなく快適に過ごしています。患者さんに施すことは自分でも経験しておきたいと思う医療従事者も多いと思います。でないと正しいアドバイスができないことがあるからです。ぼくもリアルタイム血糖測定(リブレ)や自己血糖測定、そのほか胃カメラや大腸カメラも経験してきました。今後はスタッフたちにも体験を勧めていきたいと思っております。パワハラと言われぬよう言動には注意しながら(笑)
【1型糖尿病とインスリン療法 】
1型糖尿病はインスリン分泌を担う膵β細胞が自己免疫により破壊される結果,インスリン分泌が枯渇する疾患です。このためインスリンの補充が必要です。これを模倣するように超速効型インスリンを持続的に補充するインスリンポンプ療法が1970年代に開発されました。一方でインスリンを注入するためには,その根拠となる血糖自己測定が必要です。1型糖尿病患者さんは簡易式の血糖測定器を用いて1日4回ほど血糖測定を行い,血糖値の補正や食事における追加インスリン量を決定しています。
【SAP療法】
持続血糖モニタリング(CGM)は,皮下間質のブドウ糖濃度をセンサーによりモニターすることによって血糖管理に役立てる機器のことを示します。中でも,リアルタイムCGMはその場での皮下間質におけるブドウ糖濃度が示されるもので,2015年2月から臨床導入されています。リアルタイムCGMとインスリンポンプを組み合わせた治療法をSAP療法と言います。CGMのブドウ糖濃度をインスリンポンプのモニターに表示することによって,インスリン注入量を調整することができます。SAP療法の導入は,血糖管理の上で大いに役立つことが報告されています(Battelino T et al:Diabetologia. 2012;55(12):3155-62. )。
[1]SAP療法の積極的な対象患者とは
インスリンポンプ療法中の1型糖尿病患者で,(1)他人の介助を要するような重症低血糖発作を繰り返す場合,(2)予測のつかない血糖変動を繰り返す場合,(3)妊娠など厳格な血糖管理を要する場合,などが良い適応であろうと考えます。
[2]注意すべき点
導入初期には,食後の血糖が抱いていたイメージよりもはるかに高く上昇してしまい,下がってこないことにいら立ちを感じることが時折みられます。このため,その点をよく説明した上で開始することが望ましいと思います。
一晩付けてみて、、リブレと同様に入浴とかできるし煩わしさもそんなにありませんが、寝返りなど就寝時には邪魔と思うことがあると思います。おそらく慣れれば問題ないと思います。
また同じロットでも,センサーによっては測定値が不正確に表示されることは大きな問題です。また,やや低めにブドウ糖濃度が表示されることがあり,それに伴い低血糖でもないのに低血糖アラートが鳴ることがあります。
★これが大きな障壁です★
個人の医療費負担が30%でも,SAP療法では通常のインスリンポンプ療法よりも約1万円高くなり,外来での支払いが検査費用を含めて毎月約2万8000円以上(薬剤費別)になります。健康保険組合により自己負担金の限度額が異なりますので,確認してみると金銭的に導入しやすい場合がありますが、まだまだ成人での導入は金銭的に難しいと言わざるを得ません。もちろん小児の1型糖尿病では全額補助制度がありますのでインスリンポンプも十分考慮しうる治療の選択肢となります。